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映画 犬王 感想

2回見たんだけど、1回目見終わった時点で書いたやつに2回目で気づいたところ追記した感想日記。

 

題材とスタッフを見て、制作発表当初からものすごく楽しみにしていた。無事見に行けて良かった!
2021~2022年はなぜか世間が平家物語に優しすぎて嬉しい。アニメ平家物語とか鎌倉殿とか…。

 

犬王役のアヴちゃんさんのことを全く知らなかったんだけど、高音低音が自由自在で当然歌も上手くてすごいなこの人…と思った。
友有役の森山未來さんも良かった。メイン2人とも本職の声優さんじゃないのにすごくお上手だったな~。
脇を固めるキャスト陣もみんな良かったです!2回見ると友魚の父確かに松重さんだ…になる。津田さんは1回目から津田さん!!と思った。

 

封切後の感想が割とミュージカルアニメ!ライブ!みたいな感じだからほぼそういう感じなのかと思ってたけど、(実際メインだったけど)しっかり話も面白かった。
ライブパートも楽しんだけど主にストーリーの感想を書きます。

 

ただただ踊りたい、演奏をしたい2人が新しいパフォーマンスを切り開いてどんどん世間にも認められて大きくなる展開は爽快感があった。だけど結局権力の都合でつぶされて、2人の道が分かれて終わるのがもの悲しかった。

 

一貫して権力者と奪われる側の抗いという感じだった。
犬王は比叡座の人間だけど、勝手に外で踊っててその時は自由だったしステージも河原から始まっていた。
友魚も幕府に保護されている覚一座に所属することで改名を余儀なくされてしまう。そこから抜け出して自分の座を作ることで、自分の好きな名を名乗ることができた。
だけど将軍の都合で友有座は潰されて、また名前もそれ以外のものも失う。
犬王も生き続けはしたけど、友有も自分の平家物語も失ってしまったし…。

名前を強制的に変えさせられたり、自分で付けたり、名前の使い方が良かった。
処刑の直前に名を戻したことでずっと出会えなかったけど、ラストの現代での再会シーンが最初の出会いの反復だったのが美しかったな。
名前が変わると「見つからなくなる」ではなく「見つけにくい」って設定がいい塩梅だと思った。パンフ読むと脚本の野木さん案っぽい。すぐには見つからないけど探し続ければ見つかるかもしれない。だから600年もずっと諦めずに探し続けてたんだな。

 

平家の亡霊が炎みたいな姿でかわいらしかった。
呪ってたんじゃなくて悪いお面に生贄にされた犬王を守ってくれていたということかな。そのままだと死ぬところを、そのおかげで異形だけど命は助かった。過去と未来がめちゃくちゃな話をするけど、将来自分たちの話を聞いて伝えてくれる人だから胎児時代に守ってくれたのかな。
父に呪いが自分に返ってくるところは普通にグロくてなかなか…。

 

とにかくずっと「足利…」という感じだった。
友魚は草薙の剣のせいでで父と視力と正気の母を失うけど、祟りに遭うようなこと指示したのは足利なわけで。
2回目見ると、壇ノ浦に来た使者に対して漁村の人たちは「何者だ?」って言ってるし、友魚の母の恨み言でも「だれだったんだ」みたいなことを言ってるから、最初あいつらが何者なのかもわからず、ただ恨みを晴らそうとして旅を始めてるんだよな。
(観客には「北朝が欲しがった」って解説があったけど)

だけどそんな友魚が、谷一と出会って琵琶法師に魅力を見出していくところが良かった。
琵琶と出会って犬王と出会って、恨みを晴らすって言う当初の目的はどっかいっちゃってるの良いよね。そっちの人生を歩もうね。
いつあのときの使者が足利の者だって気づいたんだろう。多分覚一座に入って以降のどこかのタイミングだと思うんだけど見返さないとわからん…。
尊氏の法要には出てたからあのあたりなのかもしれない。気づいたのがいつだったにせよ、その頃には恨みを晴らすよりも琵琶や犬王が生きがいになっていたんだろうなと思う。
なのにまた全て奪われてしまって…全部足利のせいなので最終的に尊氏の墓に向かうのは妥当だし、その行動のせいで処刑されてしまうのは覚悟のうえというか。もうあの状況では自分の命なんてどうでもよくなっていたんだなというのが悲しい。
処刑の直前に「所詮、壇ノ浦の友魚」を名乗ったのは、琵琶や犬王を奪われて、友魚として旅をしていたころに戻ってしまったからなんだなあ。

犬王、ひた面になって唯一見せた感情のわかる表情が最後の怒りだったし、そのあとすぐ、本当に素顔すら仮面になってしまったのが…。

 

元々ほとんど記録に残ってない犬王を題材としている話だったけど、観阿弥・藤若(世阿弥)がこれだけ現代にまで名前を残していることとの対比としてあの最後の静音のシーンはすごかった。
犬王は消えてしまった平家の物語を拾い上げたけど、この映画の制作者も同じことをやっているんだな。
残されなかった2人の哀しさと、600年後に出会いの姿で再会できた喜びの余韻が良かったです。

 

とにかく情報量の多い映画だと思った。
それがちゃんと観客に伝わる脚本になってるのがさすがと思う。

ライブシーンの歌、平家物語を歌っていることはわかるから歌詞を理解しようとしてなんか必死になってしまった。集中力が試されていた。

監督の解説助かる。
歌詞出しといてくれ~と思ったらパンフに載ってた。
2回目はちょうど字幕付きの回を見れた!めちゃくちゃわかりやすかった!

以下、改めて見たい監督のツイート。

 

 

 

犬王_1週目特典とパンフ

犬王_2週目特典

野木さんの書き下ろし短編良かった。期間限定配布じゃなくてパッケージの中に入れてくれるといいな。