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完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件 考えたこと

読んだ。
胸糞すぎて有名な事件のドキュメンタリー。
図書館でたまたま見かけたから借りてみた。
https://www.amazon.co.jp/dp/4163916598?tag=bunshun_online-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1&creative=6339

起訴されてるだけで7人が殺害されていて、監禁されていた17歳の少女が脱出したことで事件が発覚するんだけど、被害者の中には10歳と5歳の姉弟がいる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E7%9B%A3%E7%A6%81%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
事件詳細。閲覧注意。

この事件の概要を知る中で、どうしたって一番悲惨に思えてしまうのがこの10歳の女の子だ。
彼女は母方の祖父母、両親、弟と共に監禁され、自身も虐待されるし、家族が殺されるのを見せられて遺体の解体作業も手伝わされ
さらには母親や弟の殺害にまで加担させられる。当然その後の遺体の処分もだ。
被害者のうち、殺された順は彼女が7人目。
先に大人が全員殺される。
弟と二人だけになったあと、「何も言わないから(父方親族の)家に帰して欲しい」と訴えていたという。
だけどお前が言わなくても弟がどうなんだ?と脅迫される。
そうして弟も殺すよう仕向けられ、最後には自身の死の承諾もさせられる。
ずっと、10歳の子供になんてことを…という目線で読んでいた。

だけど、裁判記録をもとに時系列順に事件のあらましが説明されていき、ついに彼女が殺害のターゲットにされるあたりで、虐待される前の元気だったころの彼女の様子の記述があった。
SPEEDが好きで曲をよく歌っていたという。
ここを読んだ瞬間、印象がガラリと変わってしまった。

殺害当時1998年。10歳。
この子、多分同い年だ。

これまでずっと、XX年に何があって…と年代の記述はされていた。しかし実感を伴うことなく適当に読み飛ばしていた。
当時の自分に照らし合わせたりなんかしようと思ってなかった。だけど、SPEEDがヒットを飛ばしている時期に10歳というのは、そういうことなんだよな。

事件の発覚は少女が逃げ出した2002年だ。この時点ですでに殺害から4年経っている。
また、この本によると、事件詳細がわかるにつれ報道規制がかけられていたという。
実際そうなんだと思う。こんな大事件が印象に残らないはずがないのに、2002~3年ごろに知っていた記憶がない。
大人になってから、「残虐で有名な事件と言えば」みたいな流れで知ったように思う。

知った時期が遅すぎて、まるで体感が無かった。
急に自分が小4~5ごろの小学校の教室の光景とか担任の先生を思い出してしまった。
そんなに学校は好きじゃなかったしあまりクラスでうまくはやっていなかったけど、友達もいたし家族も仲良かったし平和に生きていたと思う。
遠く離れた北九州で、同い年の女の子がこんな生活をさせられていたのか。
元々ショックの大きい事件だけど、別のショックに襲われた。
同じ年齢で生きていた子なんだと気付いた途端、一気に身近になった。

子供が犠牲になる事件や事故のニュースを見ると、まだまだこの先の人生が長くて可能性があったのに、それが潰えてしまったことがつらいなと思う。
実際、今現在の自分は、10歳のときには全く想像もできなかった生活をしている。
当然だけど、あの頃の環境とは全く違う。
2023年にこんなに楽しい生活(仕事以外)ができているなんて、あの頃の自分は絶対にわからない。
人生の可能性の大きさを、身をもって実感している。

こうやって事件を振り返ることができているのも私がまだ生きているからで。
でもあの女の子は10歳で、こんな悲惨な生活の中で人生が終わっちゃっているんだよな。

みんな解体されて処分されたから骨すらも残っていない。
裁判で語られている女の子たちの様子も、逃げだした少女と共犯者女の証言からの伝聞でしかない。
やるせない。

この本もそうだし詳細なWikipediaもそうなんだけど、結局実際の事件を娯楽として消費している感じがしてモヤモヤする気持ちもある。
ただ、あとからWikipediaで知ったんだけど、主犯の息子が身分を明かしてYouTuberをしていた。驚いた。
本には書かれていなかったが(裁判では触れられていなかったからだろう)犯人たちの息子二人も虐待を受けていたらしい。
異常な生育環境で育てられ、凶悪殺人犯の息子として生きなければならない。彼が親(犯人)の名前を出してYouTuberするぐらい許されるよな…。